コミュニティマネージャーの仕事とは?6つの業務カテゴリで解説

コミュニティマネージャーの6つの業務カテゴリとは

こんにちは、ファンブックの伊藤です。

近年日本でもコミュニティ施策に取り組む企業が増え、それと併せて「コミュニティマネージャー」という新しい職種への関心も高まっています。北米では需要が供給を上回り、コミュニティマネージャー人材が不足するほどだそうですが、日本ではまだまだ認知度が低く、ほとんどの企業ではコミュニティマネージャーの業務が明確に定義できていない状況です。

そこで今回は、コミュニティマネージャーの業務内容について整理し、6つの業務カテゴリに分類して解説したいと思います。

コミュニティマネージャーの方は、自身の業務範囲を上司に説明する際にご活用ください。また、管理職の方は、人員アサインや業務指示、評価を行う際にお役立ていただけると思います。

コミュニティマネージャーの仕事とは

まずここで言う「コミュニティマネージャー」とは、企業が目的を持って運営するコミュニティを管理する担当者と定義します。すなわちコミュニティマネージャーの役割は、コミュニティを企画/運営し、参加者に価値を提供しつつ、自社の事業への貢献価値を創り出していくことと言えますね。

しかしながら、コミュニティマネージャーの業務は、運営するコミュニティの種類や特徴によって変わってきます。例えば、オンラインコミュニティの管理者と、WeWorkのようなコワーキングスペースの管理人さんでは、その業務内容は大きく異なりますよね。

また、BtoCとBtoBでも若干違いが出てきます。BtoCでよくあるのが、商品やブランドのファンコミュニティです。その商品を愛してやまないファンのお客様を対象とするコミュニティですね。一方、BtoBでよくあるのがITツール等を提供する企業が主宰するユーザーコミュニティです。お客様に導入いただいたITツールをより効果的に活用していただけるようにと、カスタマーサクセスの一環としてコミュニティ運営されるケースが増えています。

このようにコミュニティの種類が異なると、目的や規模感、コミュニティメンバーのニーズが異なり、提供するコンテンツも変わります。すなわちコミュニティマネージャーの業務内容も変わってくるというわけです。ですので、コミュニティマネージャーの業務内容については、各社それぞれで自社のコミュニティにとって必要な業務を定義する必要があります。

本記事では、できる限り汎用性や網羅性を重視して業務内容を整理していますので、これをベースに自社用にアレンジいただくとより適切な業務定義ができるはずです。ぜひお試しください。

コミュニティマネージャーの6つの業務カテゴリ

コミュニティマネージャーの業務は、下記の6つの業務カテゴリに分類できます。複数人で役割分担するケースもあれば、一人で全てをこなしているケースもあります。もしかすると、担当者が曖昧になっていたり、疎かになっている業務もあるかもしれませんね。自社の状況と照らし合わせてみると面白いのではないでしょうか。

それでは、これら6つの業務カテゴリについて詳しく解説していきましょう。

Design – 構想と設計

コミュニティ施策全体の構想を企画立案し、その上で適切なコミュニティ設計を検討するという仕事です。
コミュニティマネージャーの業務において、最も戦略的思考が求められる業務領域であり、その成果を大きく左右する重要な仕事です。検討すべき事項の例をいくつか挙げておきます。

目的なぜやるのか?何を実現したいのか?というコミュニティ施策の目的を自社の企業ビジョンや事業と紐づける形で定義します。
目標いつまでに何を達成するのか?目的に基づいた具体的な目標を設定します。
KPIとして定量的に評価できる目標設定がより望ましいです。
ステークホルダー分析社内外を問わず、コミュニティを巡ってどのようなステークホルダー(利害関係者)がいて、彼ら彼女らはどのようなニーズを持っているのか、またどのようなリソースを持っているのかを整理します。
コミュニティデザインどのような人たちを集め、どのような価値交換を促すのかという枠組みをデザインします。
コミュニティ内で交換される価値を最大化することを目指し、それを促すような小さなエコシステムを設計するイメージです。具体的には、ビジョン、活動指針、コンテンツ方針、参加条件、ルール、コミュニケーション設計などがあります。
予算予算計画を作成し、ROI(費用対効果)のシミュレーションなども行います。
ただし、コストをかけることで社内の評価もよりシビアになりますので、効果に確信が持てない段階では、あえて予算ゼロでスタートするという選択肢もあります。
運営体制必要な役割分担や人的リソースを定義します。
コミュニティの運営体制は部門をまたぐケースも多く、その場合は、その部門や人に対する意義やメリットも説明できる必要があるでしょう。

このように、コミュニティ施策自体の戦略や計画を構想し、それを実現するための設計に落とし込んでいくという、非常に高度な業務がまず最初に必要です。ただし、これらの業務はコミュニティマネージャーではなく、コミュニティオーナーつまり管理職の方が担い、実業務をコミュニティマネージャーが行うというケースもあります。

また、トレンドや他社に影響され「うちもコミュニティやろう」と、戦略なしで走り出してしまうケースも多いため注意が必要です。戦略なきコミュニティ施策は成果を出すどころか、企業のリソースを浪費し、かえって顧客の不満を招くリスクも孕んでいます。

Content – コンテンツの企画運営

コミュニティを立ち上げたら、そこに対して継続的にコンテンツを提供しなければなりません。しかも、コミュニティメンバー限定のコンテンツでなければ意味がありませんので、その多くは新たに作る必要があり、非常に負荷の高い業務となります。

コミュニティのコンテンツは大きく分けて3つの種類があります。

情報提供型メールやオンラインツール、メディア等を通してコミュニティ内限定の情報提供を行うというものです。ここでしか得られない情報を如何に提供できるかがコミュニティの付加価値になります。
イベント型勉強会や交流会、意見交換会、体験会など、企画次第で内容は様々です。実際にメンバーが集まるリアルのイベントだけでなく、オンラインイベントも増えてきています。
機会提供型場の提供もまたコンテンツの一つです。
メンバーが主体的に参加し活動できる「場」というのはコミュニティならではのコンテンツで、非常に付加価値の高いものです。具体的には、商品開発や共同研究、メンバー同士のコラボレーションなどがあります。

コミュニティマネージャーは、コミュニティの目的、目標を踏まえ、それを達成するために効果的なコンテンツを企画検討し、計画を立て、実行していく必要があります。コミュニティに対し、どんなコンテンツを提供すれば喜ばれるのかというプロデューサー的手腕も必要ですし、それを実現するための実行力つまりディレクター的スキルも必要です。そしてさらにそれを定期的に実施し継続していかなければなりません。

そうですね。めちゃくちゃ大変です。

Platform – プラットフォーム管理

メンバーの活動やコミュニケーションを支えるITシステムを提供し、運用します。具体的には、メンバー管理の仕組みや、オンラインコミュニケーションツール(FacebookグループやSlackなど)、課金システム(会費制の場合)などがあります。

コミュニティのコンテンツや活動内容に合わせて、適切なツールを選定し、導入することから始まり、メンバーに活用を浸透させ、コミュニケーションを活性化していきます。導入するだけではダメで、使ってもらってなんぼですからね。

特にSlackのようなオンラインコミュニケーションツールにおいては、そのツールの機能を理解し、活用設計や、ルール設定、メンテナンス等も必要になりますので、ある程度のITリテラシーが求められます。メンバーからの「この機能使って良いですか?」「こんなことしたいんだけどできますか?」「エラーが発生します助けて」というような問い合わせにも対応しなければならないのです。

Member – メンバー管理

メンバーの入退会管理や、新メンバーへのオンボーディングというような事務的なメンバー管理業務ももちろんありますが、より重要なのが、メンバーの行動を促すような働きかけをしてコミュニティを盛り上げていくような、リーダーシップやファロワーシップ的な役割です。また、メンバーとの交流を通して信頼関係を構築することも非常に重要です。コミュニティマネージャーがメンバーの信頼を獲得できなければ、必ずと言って良いほど、そのコミュニティはうまくいきません。

逆に、人に好かれる人間性が大きなアドバンテージになるのも面白いところです。愛されるコミュニティマネージャーは、能力的に多少劣る部分があっても全く問題ないのです。むしろメンバーが自然と協力的になり、一体感が生まれてコミュニティがうまく回っていくというケースもあるほどです。

Promotion – プロモーション

企業が主宰するコミュニティはほとんどの場合、会員数を増やし成長させていくことが求められます。また、コミュニティによる付加価値を顧客に認知させ、企業としての競争力に結びつけていかなければなりません。すなわち、コミュニティの外に対する情報発信としてプロモーション施策も重要な業務になります。

どのような媒体で、どのような情報発信を行なっていくのか、プロモーション計画を立案し、実行していきます。自社のプロモーション担当と協力して取り組めるケースも多いと思いますが、それでもやはりコミュニティマネージャー自身にマーケティングやブランディング、PRに関する知識が必要です。

Webサイト、SNS、プレスリリース、イベント集客など、プロモーション業務一つをとっても領域は多岐に渡ります。

Advocate – 社内啓蒙

コミュニティ施策というのは、非常にパワフルな成果をもたらしてくれる反面、その成果の証明や数値化が難しいという厄介な特性があります。さらに、短期的な成果は限定的で、おおよそ1年以上かけて取り組むべき中長期的な施策です。

ですので、社内に対する説明を怠ったり、あるいは説明の仕方を誤ると不幸を招く原因になります。評価されない、予算も人も使えない、社内の協力も得られない、そしてコミュニティ施策自体の打ち切りへと繋がってしまう可能性もあります。

なぜコミュニティ施策に取り組む必要があるのか?どんな効果が期待できるのか?といったことを社内の関係者にしっかりと説明し、理解を得ること。そして適切な期待値設定と共に、予算や人的リソースを確保し、社内の協力が得られる環境を作っていくこと、それもコミュニティマネージャーの仕事の一つなのです。

社内啓蒙の達成度を測るチェック項目」をいくつか挙げてみました。いかがでしょうか?
これらは会社が与えるべきものではなく、コミュニティマネージャー自身が自ら勝ち取っていくべきものであることを忘れてはいけません。

  • 企業ビジョンや事業における、コミュニティ施策の位置付けを説明できる?
  • コミュニティのKPIに対し、上司や関係部門の理解が得られている?
  • 必要な予算や人的リソースが確保できている?
  • 社員はコミュニティ運営に協力的?
  • コミュニティマネージャー自身が社内で高く評価されている?

まとめ

コミュニティマネージャーは、最強の職業である

コミュニティマネージャーの業務内容を6つの業務カテゴリに分類し解説しました。コミュニティマネージャーの業務難易度の高さ、そしてコミュニティマネージャーという役割のポテンシャルの高さを感じていただけたでしょうか?

  • 「構想と設計」は戦略的思考力が求められます。
  • 「コンテンツの企画運営」ではクリエイティブなプロデュース力。
  • 「プラットフォーム管理」ではITリテラシー。
  • 「メンバー管理」ではリーダーシップや人間力。
  • 「プロモーション」ではマーケティングやブランディングの知識。
  • 「社内啓蒙」では、説明能力はもちろんのこと、社内政治を攻略する折衝能力も必要です。

このように業務領域が多岐に渡り、そこで必要とされるスキルセットも非常に高度なものばかりというのが、「コミュニティマネージャー」という仕事の特徴です。

ですので、管理職の方は、コミュニティマネージャーに誰をアサインするかで、コミュニティの成果は大きく変わるということを認識する必要があります。

また、コミュニティマネージャーの方はラッキーです。あなたは今、大きなチャンスを手にしているはずです。自分次第で企業の競争力を左右するほどの大きな成果を生み出すこともできますし、学ぶべきことがたくさんあり自身の成長を加速できる、めちゃくちゃ面白い仕事、それがコミュニティマネージャーなのです。コミュニティマネージャーは、最強の職業です。

投稿者プロフィール

伊藤真之
伊藤真之代表取締役
1983年生まれのパラレルマーケター、そしてコミュニティデザイナー。
マーケティングやコミュニティデザインの方法論を研究開発する傍ら、自身では宇宙ビジネスの実践コミュニティ「ABLab」を主宰。人が動き出すコミュニティ創りを実践する。複数の企業をコミュニティとマーケティングで支援し、仕事の後はクラフトビールで乾杯したい。